川崎市市制100周年記念の象徴的事業として開催中の「全国都市緑化かわさきフェア」(10月19日~11月17日)。そのコア会場の一つ、富士見公園会場(川崎区)で、水素を使って電力を供給し、植栽コンテストのオブジェを維持している一角がありました。*
*水素を使った電力の供給は10月16日、19日、20日の3日間のみ実施
注目の水素を使った電力供給「水素吸蔵合金配送システム」
この水素を使って電力を供給する装置は「水素吸蔵合金配送システム」と呼ばれるもので 川崎市に本社を置く三菱化工機㈱が中心となって手掛けています。同社企画部広報・CSR課長の古山勇樹さんによると、「水素吸蔵合金配送システムは製造した高純度の水素を専用のタンクに貯めて、電気が必要な場所へ運び、燃料電池を使い電力を供給・利用する仕組み」と説明します。
「水素社会」の実現に向けて
水素は二酸化炭素(CO2)を出さないクリーンなエネルギーとして、世界の注目を集めています。川崎市でも日常生活や産業活動で利活用する「水素社会」の実現に向けた取り組みが進められています。市民生活の中で水素エネルギーを最も身近に感じられるのが水素自動車(FCV)。ガソリンスタンドに相当する燃料供給を行う水素ステーションの整備が進めば、水素自動車はさらに普及すると期待されています。その一方で普及にはしばらく時間がかかるともいわれている中で、より手軽な場所で水素エネルギーを使えるようにして普及を図るのが水素吸蔵合金配送システムなのです。
同システムの可能性について古山さんは、イベントや祭りで使われる発電機としての活用に加え、「タンクに貯蔵した水素は減らない特性」から防災時に役立つアイテムとしても期待できるといいます。
DeNAともイベントで協力
11月3日には地元を拠点にする男子プロバスケットボール(Bリーグ)・川崎ブレイブサンダースを運営する㈱DeNAが国道409号道路用地(幸区幸町2丁目)の社会実験広場・多摩川見晴らし公園周辺でストリートカルチャーをテーマにした複合フェスティバル「「Block Party #044409 Energy charge by MKK」(ブロックパーティー ヨンヨンヨンマルキュー)」を開催。同社は協賛スポンサーとして、水素吸蔵合金配送システムによるクリーンなエネルギーを活用してDJブースに電源を供給します。
三菱化工機は化学工業用機械の国産化のため三菱各社の出資で1935年に創立。モノづくり技術の強みを生かし、幅広い分野での装置・設備の設計・製作・建設に携わってきました。水質汚濁防止・大気汚染防止などの環境分野や、舶用・産業機械分野、都市ガス、石油、電力、化学、医薬、食品、半導体、バイオ、水処理など事業は多岐に渡り、水素関連の事業は約60年前から取り組んでいます。
現在、同社は2035年に売上高1,000億円の目標を掲げ、新しい分野での事業の確立を目指しています。水素も次世代のクリーンエネルギーを担う事業として位置付けられています。
2024年8月には本社・川崎製作所の全面的な再整備を発表。老朽化が進む工場、事務所棟、研究棟などを11月から順次取り壊し、事務所研究棟と工場実験棟に建て替え配置を行います。工場研究棟は官公庁や大学と連携を図ることができるオープンイノベーションの場が整備されます。新しい施設は2027年に完成予定で、古山さんは「当社が誕生した川崎で今後もモノづくりを継続し、川崎と共に発展していきたいという意思表示です」と力を込めました。