2024年に川崎市は市制100周年をむかえます。
100周年に向けた「市制100周年記念プレ事業」として、2023年10月1日から11月15日の期間、川崎駅西口大宮地区にてウォールアートのライブペイントを行っています。
誰もがアートを体験、体感し、楽しむことができる取組として制作しているウォールアートですが、川崎市の近隣に住んでいる方や川崎市内で美術やデザインについて学んでいる学生も参加。思わず歩きたくなるような魅力あるまちづくりのきっかけとなるウォールアート制作の様子を御紹介します!
ウォールアート制作の概要
「市制100周年記念プレ事業」のひとつとして実施しているウォールアート制作ですが、今回の目的は「まちなかで、誰もがアートを体験、体感し、楽しむことが出来ること、そしてウォールアートを通じて歩きたくなるようなまちづくりを推進し、賑わいを創出することでまちの魅力をさらに高め、次の100周年に向けて成長するきっかけとなること」です。
そこで川崎駅周辺で醸成されてきたアート資源を活かして、ウォールアート制作を行う事業者を募集しました。集まった応募のなかから最も評価の高い提案をされたガーデングローブ合同会社と共に制作を進めることを決定いたしました。
また、今回のウォールアート制作を通じて、市制100周年記念事業の基本理念で掲げる「多様性」の価値観の共有、新たな地域資源としての地域への愛着と誇りの高まり、地域イメージの向上や落書きの改善等が期待されます。
プロジェクト担当者の想い
今回のプロジェクトを担当している川崎市 まちづくり局の塙綾子さんにお話を伺いました。
ー今回のプロジェクトについて教えてください。
川崎駅西口大宮地区は1999年に都市計画が定められ、少しずつ整備が進んできました。この道路は川崎駅の東西を繋ぐ動線上にある大切な道路なのですが、これまでは沿道に建物がなかったため人通りが少なく壁の汚れや落書きがあることが課題となっていました。
また、幸区地域デザイン会議において、地域の高校生から「アートはまちに興味を向けるコンテンツとして有効」という意見もでまして、そういった意見も参考に次の100年に向けた「新しいかわさき」を生み出すために今回のウォールアート制作を進めています。
ーウォールアートが川崎の100周年にどのように貢献してほしいですか。
川崎の東西を行き来できる箇所は限られています。この道路は市民の皆さまにとっても大切な道路なので、歩いていて楽しい空間になってほしいです。
今日、笑顔を見せながらウォールアート制作に取り組んでいる学生のみなさんのように、この道を通る人も笑顔になってくれると嬉しいです。
アーティストの想い
今回のウォールアート制作に携わっているガーデングローブ合同会社のTokio Aoyama氏(写真左)とKensuke Takahashi氏(写真右)にお話を伺いました。
ー普段はどのような活動をされているのですか。
Kensuke Takahashi氏(以下、Kensuke) 絵に関わる仕事は何でも行っています。自分の作品を作って展示することもありますが、大型の壁画やライブペイントを行うことが多いです。
小さい頃から絵を描くのは好きだったので、大人になったら絵を仕事にしようと考えていました。ライブペイントを行っている先輩などもいて、少しずつ今のような壁画を描くことがメインとなってきましたね。
「これを描こう」と決めないで作品を作っていくのが僕のスタイルです。依頼してくださった方のイメージと自分のやりたいことをすり合わせて、お互いが「いいね」と感じられるような絵を描くことを意識しています。
Tokio Aoyama氏(以下、Tokio) 今回のようなライブペイント以外にも、商品のパッケージやレコードジャケットのデザインを行っています。どちらも海外の案件が多く、海外のお菓子のパッケージや、海外のジャズ・ヒップホップなどのジャケットをデザインしています。
僕はもともと音楽が好きで、レコードのジャケットや映画のポスターを見て「絵を仕事にしたい」と思うようになったんです。実際にアメリカのデザイン学校に通って勉強もしていました。
ー今回の【市制100周年記念プレ事業】に参加した理由を教えてください。
Kensuke 僕たちの先輩にドラゴン76さんという、ニューヨークを拠点にするアーティストがいるのですが、ドラゴン76さんと川崎市のつながりがきっかけです。
川崎で行われたブレイクダンスの世界大会でドラゴン76さんがライブペイントをして、その後に川崎市の新庁舎の仮囲いにもペイントしています。その際、55メートルの壁画に5人のアーティストでペイントする企画があり、僕とTokioさんも参加しました。
Tokio 他にも、川崎にある「ホテル縁道」の部屋の絵を描かせてもらったこともありますし、川崎とガーデングローブは関わりが多かったんです。そこで今回の話を聞いて「ぜひ川崎市の市制100周年にも貢献したい」と思い、応募させていただきました。
Kensuke 川崎市はとてもカルチャーに寛大で、僕たちも描きたいものを自由に表現できるので、一緒に作品を作っていて楽しいですね。
ー今回のウォールアートのコンセプトを教えてください。
Tokio とにかく川崎に関するものを全て取り入れました。自然や動物、鳥、魚、人物、音楽といったカテゴリーだけでなく、川崎が「子どもにやさしい」「ダイバーシティがある」「障害がある方も住みやすい」まちであることも表現しています。このウォールアートを見れば「川崎とはどんなまちか」を理解できるデザインです。
Kensuke 新庁舎のときは「過去から未来」がテーマだったのですが、今回は「川崎の今」がテーマです。場所的に離れて全体を見ることが難しいので、ひとつひとつのモチーフを大きく描いています。そうすることでモチーフがはっきりと表現できて、近くで歩きながら見ても楽しめるデザインになるんです。
ー参加している学生たちに何を感じて欲しいですか。
Kensuke 「こういった形での絵描きの仕事もあるよ」って伝えたいですね。昔は絵描きのハードルは高く、本当に一握りの人しか活躍できない状況でした。ですが、今はしっかりと仕事として確立されていて、いろんな活躍の方法があると知って欲しいです。
Tokio 昔は壁画がまったくありませんでしたが、最近は増えてきました。また、学校でもなかなか壁画を描く環境はありません。今回を機に、壁に絵を描く楽しさや難しさを感じて欲しいです。
Kensuke 今ではiPadなどデジタルで絵を描くことも普及しました。ですが、綺麗すぎないけれど離れて見るとバシッときまっている壁画という、アナログの楽しさも感じてくれたら嬉しいですね。
ー今回のウォールアートが川崎市の市制100周年にどう貢献してほしいですか。
Kensuke この道は毎日通る人もいれば、たまたま通りかかった人もいると思います。通った人みんなが明るい気持ちになれるような壁画にしたいですね。下を向いて歩いているよりも、上を向いて歩いている方が気持ちも晴れますし。愛されて、みんなの自慢になるような壁画になれば嬉しいです。
Tokio ウォールアートを進めていると、最初は首をかしげて見ていた人も、完成が近づくにつれて「いいね」と声をかけてくれるようになります。完成した絵がまちに馴染んで、みんなの誇りになるような絵となってほしいです。
参加した学生の声
この日は、川崎市立川崎総合科学高等学校デザイン科の生徒も制作に参加しました。笑顔も見せながら制作に取り掛かっていた生徒の声を紹介します。
夢中に制作に取り掛かっていた大神 結さん
ー参加しようと思った理由を教えてください。
学校でウォールアートデザインの投票があったのですが、自分が投票したデザインが選ばれました。とても素敵なデザインだったので、自分も一緒に作りたいと思って参加しました!
ーウォールアートが川崎市の100周年にどう貢献してほしいですか。
壁に絵を描くことは落書きだというイメージを持つ人が多いと思います。ですが、このウォールアートが多くの人の目にとまることによって、アートとして広まってほしいです。
腕前を存分に発揮していた力丸雪乃さん
ー参加しようと思った理由を教えてください。
学校で先生が誘ってくれたことがきっかけです。これまでウォールアートに取り組んだことはなかったのですが、話を聞いてとても面白そうだと思ったので参加しました。実際にウォールアートに取り組んでみると想像以上に楽しいです!
普段は1人で1つの作品を作ることが多いのですが、みんなで1つの作品を作る経験も新鮮です。特に今日はプロのアーティストさんと一緒に作品を作れるので、このような貴重な機会に参加できて本当によかったと感じています!
ーウォールアートが川崎市の100周年にどう貢献してほしいですか。
ウォールアートは落書きのイメージがあって「治安が悪そう」と考える人がいるかもしれません。ですが、この道を通る人がウォールアートを見て「華やかだな」「かわいいな」「元気が出る!」と感じてくれるような作品になってほしいです。
終始笑顔で取り組んでいた末藤樹梨さん
ー参加しようと思った理由を教えてください。
とにかく楽しそうだと思ったので参加しました!
いつもはテーブルに収まるくらいの大きさの作品しか作っていませんが、こんなに大きな壁にローラーを使って絵を描けることはとても気持ちいいです!
ーウォールアートが川崎市の100周年にどう貢献してほしいですか。
今回のウォールアートは川崎のことが詰まっています。このウォールアートをきっかけにして、もっと川崎のことに興味を持って、川崎のことを知ってもらえたら嬉しいです。素敵な作品になるように頑張って描いていきます!
2024年、川崎市は市制100周年をむかえます
川崎のまちを明るくするウォールアート制作は11月15日(水)まで行う予定です。
制作過程はガーデングローブ合同会社のインスタグラムやX(旧Twitter)でも発信されています。
もちろん、川崎駅西口の制作現場にお越しいただいても制作過程をご覧になれます。その際は通行人に御配慮して見ていただけますと幸いです。
川崎市では市制100周年に向けて多くのイベントを開催しています。川崎市市制100周年記念事業公式WEBサイトのイベントカレンダーでは、今後のイベント日程もご覧いただけますので、ぜひ皆さまの御参加をお待ちしております。